高齢者の財産管理

成年後見制度(任意後見制度と法定後見制度)

【 任意後見制度 】

任意後見制度は、将来、判断能力が低下した際に備えて、予め公正証書で任意後見契約をしておき、判断能力が低下した際には、その契約に基づいて任意後見人の援助を受ける制度です。

同制度を利用するには、ご自身が信頼できる方を任意後見人候補者として選び、その方との間で、将来、ご自身の判断能力が低下した際の財産管理や介護サービスの締結等を引き受けてもらう任意後見契約を締結しておく必要があります(財産管理等を引き受ける方を「任意後見人」といいます)。なお、任意後見契約は、必ず公正証書で契約を締結する必要があります。

任意後見契約は、ご自身の判断能力が低下した場合に備えて締結するものですので、すぐに効力が発生するわけではありません。ご自身の能力が低下した際に、任意後見監督人が家庭裁判所に選任され、それによってはじめて効力が生じます。任意後見監督人は、任意後見人が契約の内容どおり、後見事務を行っているかを監督します。

任意後見契約では、ご自身の意思で事前に好きな任意後見人を選ぶことができるのが最大の特徴で、また、ある程度、ご自身の介護方法等についても決めておくことができます。ただし、法定の成年後見人では認められている「取消権」が任意後見人にはないので、その点は注意が必要です。取消権とは、本人が単独で行った法律行為を無効にする権利で、例えば、本人が第三者に騙されて商品を購入してしまった場合には、法定後見の場合には後見人が当該売買契約を取り消すことができますが、任意後見人はできません。

【 法定後見制度 】

一方で、法定後見制度は、本人の判断能力が既に低下している時に、ご家族等の申立により家庭裁判所が本人に代わって財産等を管理する者を選任する制度です。法定後見制度には、①後見、②保佐、③補助の3種類があり、本人の判断能力の低下の程度に応じて選任されます。そのため、後見人、保佐人、補助人のそれぞれの権限も異なっており、法律で細かく定められています。

なお、法定後見制度は、本人の財産保護の制度を主眼としていますので、後見人は本人のメリットとなる行為しか行えません。一見すると何の問題もないように思えますが、生前贈与や相続が発生した際に備え相続税のための資金を準備するための資産換価等が制限されることになります。この点は意外と知られていませんが注意が必要です。財産管理は任せたいが、資産運用や相続税対策もしたいという場合は、後述する家族信託という選択肢が考えられます。

後見制度を利用するうえでは、それぞれのメリットやデメリット、さらには後見人の権限等を理解しておく必要があります。ご自身の判断能力が低下した場合に備えておきたい方、ご家族の判断能力が低下してしまい財産管理にお困りの方は、まずは、お気軽にご相談ください。

家族信託

近時、利用されることが多くなっているのが家族信託です。家族信託とは、家族に財産を託して、自分が決めた目的に沿って、その保有する財産の管理・処分をしてもらう契約です。

ご自身の判断能力が低下した際の制度としては上述した成年後見制度がありますが、これらの制度にはそれぞれメリット・デメリットがあり、ご本人やご家族の希望する財産管理が実現できない場合があります。そのような場合に、家族信託を利用することでご本人・ご家族の希望を叶えることができます。

家族信託の特徴としては、家族信託は成年後見と異なり、開始時期を柔軟に選択できるほか、予め契約において財産の管理処分方法を定めておくことができるため、資産運用、相続税対策等を含め幅広い財産管理を実現することができます。ただし、家族信託は財産の管理を目的としていますので、本人の介護や医療等の本人の身の回りのことに関する法律事務(身上監護)には向かないといわれています。その他にも、家族信託にもメリット・デメリットが存在します。

当事務所では、ご相談者のそれぞれのご事情を踏まえて、適した財産管理の方法をご提案させていただきます。

ご自身の今後の財産管理で悩まれている方は、まずは、お気軽にご相談ください。